悪役コレクション3
ケトバグイ(言葉喰)
【ケトバグイ設定・ストーリー】
ケトバグイ、それはヒトの吐く負の言霊の力を食べて生き、成長する狐。
過去、毎日のように負の言葉を呟くヒトに憑き、成長し続けていた。
ケトバグイにとって負の言葉を聞くことは、
ヒトの為ではなく、ただ己が生きるためのこと。
しかし、毎日負の言葉を受け止め続けてくれるその狐に情が沸いた其のヒトは、ケトバグイの黒色によく似た黒水晶をケトバグイに贈った。
ケトバグイは何も知らぬまま、贈られた黒水晶を飲み込んでしまう。
だが、黒水晶は非常に強力な浄化作用を持つ天然石だった。
それ以降、どれだけ負の言葉を投げかけられても
ケトバグイは負の言葉で成長できなくなり、飢え続けた。
ここで初めて、ヒトはケトバグイが負の言霊で生きる生物と知る。
「こんなはずではなかったのに……」
ケトバグイを苦しめるために黒水晶を贈ったのではない、と。
其のヒトはそれ以降、ケトバグイの為に泣きながら負の言葉を呟くようになった。
悪いのは、負の言霊を吐くヒトに憑いたケトバグイか。
それとも、情の贈り物でケトバグイの生きる糧を奪ってしまったヒトか。
どんなに嘆いても、過ぎた時間は戻らない。
【ケトバグイ設定について】
『悪役コレクション』という題材は、「幸」を題材にして作品を作る私の方向性と真逆の題材です。
そのため、私はこの企画展では、「悪」とはどのようなものか。
自身が作り出す「悪」は、どのような物事を経て悪としてとらえられる存在になってしまったのか等、設定を考えた上で作品を作っています。
COVID-19が日本で広まってから、ニュースやTwitter、人々の強い負の言葉が頻繁に目に入るようになり、精神的にも疲れてしまうような日々が現在も続いています。
では、どのように行動したらもっと良い方向に向かったでしょうか?
出す答えはもちろん人それぞれ。しかし、未知の部分が多い相手に対しての効果は、実際に試してみなければ吉と出るか凶と出るかわかりません。
ケトバグイの設定は、片方は己のため。片方は良かれと思ってやったことが、実は命を奪うかもしれないほど危ないことだったというお話。
場合によっては「悪いこと」イコール「悪」と決めつけるのは、とても難しいこともあるのではないかという点を取り上げて題材にしました。
人の出す言葉は、「言霊(言魂)」とも言われ、霊的な力を持つとも考えられています。
ついつい周りに足を引っ張られて、ネガティブになってしまったり、負の言葉を言ってしまったり、聞くことも多い毎日ですが、そんなマイナスエネルギーを含む言霊を浄化してくれる黒水晶を作品に取り入れ、この作品をお迎えしてくださった方が、マイナスエネルギーを溜め込みすぎないよう願って作品を作りました。
ケトバグイの漢字名は、『言葉喰』。
「言葉」をケトバという読みにしたのは、実際に奈良時代の東国で話されていた上代日本語で「言葉」を「ケトバ」という読みで話していたところから使いました。
そこから「喰」を付けて、そのまま言葉を食べるという意味で名付けています。
尻尾は「言の葉」から、葉の形をイメージした造形にしています。
合わせて、言葉から成長する葉をイメージして、黒をベースにメタリックグリーンのグラデーションを、頭部と尻尾に入れています。
ケトバグイの設定は少し重めになってしまいましたが・・・。
疲れがちな毎日。ケトバグイにちょっとでも愚痴をこぼして、その愚痴を消化&浄化してみてはいかがでしょうか?
言の葉と心のデトックスで、お迎えいただいた皆様に少しでもホッとする時間を。